腕時計の命とも言える文字盤やムーブメントを守る「風防」は、時計を知らない人からすればあくまで「時計のガラス」ですが、実は素材によって特徴が大きく異なります。

ここでは、とにかく頑丈なものや、ヴィンテージ感のあるものまで特性はさまざま。ここでは、時計の風防の種類や、メンテナンスの方法などについて紹介します。

そもそも風防とはなにか?

風防とは、時計表示部分や内部を保護するために、ダイアルの上に設置された部品のことを指します。

ホコリや水などの汚れ、衝撃や水圧、光の反射などから文字盤を保護するカバーの役割を果たしています。

ちなみに風防という言葉は「風を防ぐ器具」を意味しており、時計に限らずバイクや自動車などにも使われている用語です。

風防は主に3種類がある

風防は大きくわけて3つの種類があり、プラスチック、ミネラルガラス、サファイヤガラスなどの素材が使われています。

素材によって硬度が違ったり、加工やメンテナンスがしやすかったりするなど、長所と短所があります。

プラスチック風防の特徴

プラスチック風防は透明なプラスチックや合成樹脂で作られる風防のことで、アクリルガラスやプレキシガラスとも呼ばれています。

1940年代~60年代ごろの腕時計に多く使われていましたが、1970年頃からガラス製の風防が広まったことで姿を見せなくなりました。

安価で加工がしやすいのがプラスチック風防の特徴で、意外にも透明性が高く文字盤がクリアに見えるという特性も備えています。

一般的なガラス素材よりは割れにくく、粘性と弾力性があるため割れたとしても飛び散りにくいのもメリットです。素材自体が安価なため、ガラスの交換費用も比較的安く済む場合が多いです。

傷はつきやすく、経年使用によって変色することもあります。ただし、軽い傷や変色であれば研磨によって取り除くことが可能です。

硬度の高いサファイアガラスなどの素材に比べ、加工がしやすく個性的な形状をつくれるのも大きな特徴です。

強度を上げるためにカーブを描いたドーム型の形状を採用していることが多く、現代ではヴィンテージ感を味わえるのが魅力です。

プラスチック風防を採用しているモデルとしては、オメガのスピードマスタープロフェッショナルや、パネライのルミノールが有名です。

ミネラルガラス風防の特徴

ミネラルガラスは、「無機ガラス」と言われる一般的なガラスです。

ケイ酸、ホウ酸、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム(石灰)などを溶かして非結晶状態で固めたもので、紀元前3000年~2000年の古代エジプトもしくはメソポタミアが期限と言われている古くからある素材です。

プラスチックよりも見た目や質感が非常に良く。プラスチックのように細かな傷がつきにくいのが長所です。その反面、プラスチックのように研磨でメンテナンスができないので、小さな傷でもそのまま残ります。

また、通常のガラスなので、ぶつけたりすると欠けたり割れたりしてしまいます。また、形状をとどめることなく小さな破片が砕けるように割れることもあるため、文字盤を傷つけたりするリスクがあります。

サファイアガラス風防の特徴

サファイアガラスは、風防の中で最も優れた耐久性を誇る高硬度の素材です。

「サファイアクリスタルガラス」とも呼ばれますが、ガラスという呼称はあくまで便宜上で、実際にはガラスではありません。人工サファイアの粉末を水素バーナーで2000℃まで熱し、溶かして結晶化させた素材です。

宝石のサファイアとは異なり、酸化アルミナを主原料とした人工的に作られた鉱物ですが、硬度は天然サファイアと同等。ダイヤモンドに次ぐ硬さを有しています。

当然ながら他のどの風防よりも傷に強く、多少ぶつけた程度では一切傷がつきません。よほど高所から落としたり、故意に叩きつけたりすれば欠けることはありますが、一般的なガラスのように粉々に砕けることはほとんどないでしょう。

時計の風防として非常に優秀なサファイアガラスですが、それだけにコストは上がります。そのため安価な時計はミネラルガラスが採用され、高級時計にサファイアガラスが採用される傾向にあります。

特に高級時計では視認性を高めるため、無反射コーティングなどの加工が施されているのが特徴です。シリコーン化合物やフッ化マグネシウムなどを多層膜でコーティングすることで、文字盤の視認性を高めます。

デメリットとして、硬いがゆえに曲げたりするなどの加工が非常に困難なことが挙げられます。

湾曲加工がドーム型に加工したものをカーブドサファイアと呼びますが、加工が簡単なアクリルガラスやミネラルガラスに比べると、製造コストは飛躍的に上がります。

ドーム型風防が特徴であるスピードマスターなどのサファイアガラスモデルは、中央は平面にして縁側のみをカーブする「ボックス型強化サファイアガラス」を採用。見た目は従来のドーム型に近いものを実現しながら、製造コストを抑えています。

プラスチック風防は自分で磨ける

一度傷がついてしまうと基本的に消すことができないミネラルガラスやサファイアガラスと異なり、アクリルガラスであれば多少深い傷でも研磨で消すことができます。

研磨には、1000番以上の目の細かい紙やすり、サンエーパールやアモールなどの研磨クリーム、タオル、無水エタノールを用意します。

手順としては、まず研磨クリームが内部に侵入しないようセロテープなどで防ぎ、密閉した状態を造りましょう。その後、傷のついた部分に研磨クリームを塗り、傷が消えるまで擦るように磨き上げます。

傷が消えれば、研磨クリームが内部に侵入しないよう丁寧に拭き取り、テープを剥がせば完了です。

ちなみに研磨クリームの代用として、歯磨き粉で風防を磨くのも効果的。歯磨き粉の中には、歯垢を削り取ることで歯の白さを引き出すための研磨成分が含まれており、この成分を利用することでアクリルガラスの傷を削り取ります。

柔らかい天然素材の布や、使い古した綿100%のTシャツの切れ端などを用い、歯磨き粉を少量つけて円を描くように5分前後擦りましょう。最後に水気を含ませた布で歯磨き粉を落とせばOKです。

ただし知覚過敏予防タイプの歯磨き粉など、製品によっては研磨剤が含まれていない歯磨き粉もあるので注意しましょう。

お店で風防の修理を頼む相場

風防の傷は、時計専門店や修理の専門業者などに依頼して消してもらう方法もあります。

アクリルガラスの研磨の場合、傷の修復程度であれば3,000円前後から依頼が可能。風防自体を交換する場合は、8000円が相場とされています。

ミネラルガラスやサファイアガラスが傷ついた場合、研磨では修復できないため交換修理が基本となります。交換費用は20000円が相場で、2週間から1ヶ月程度の修理期間が目安となります。

風防についてのまとめ

  • 時計の文字盤を守るガラスは「風防」と呼ばれ、水や外部からの衝撃から保護します。風防には、プラスチック製のアクリルガラス、ミネラルガラス、サファイアガラスの3種類があります。
  • プラスチック風防は傷がつきやすいものの研磨で解消でき、透過度が高くヴィンテージ感があるのが特徴。ミネラルガラスは質感や光沢感がありますが、割れやすいのが難点です。サファイアガラスは耐久性が極めて高く、近年の高級時計のスタンダードです。
  • プラスチック風防は研磨クリームや歯磨き粉などを使って自分で手入れすることが可能。傷消しの研磨をプロに依頼する場合の相場は3000円前後で、交換修理の場合は8000円程度となります。ミネラルガラスやサファイアガラスは研磨で傷が消せないため、20000円程度の相場で交換修理となります。