地上波テレビ放送のデジタル化と、エコポイント制度の後押しで、薄型テレビの買い替え需要が怒濤の盛り上がりを見せたのは、いまから8年前のことです。

その後、デジタルテレビの買い換えが一段落すると、しばらくのあいだ需要が冷え込み、プラズマテレビは絶滅しました。そして今、4K・8K放送のスタートを前に、4Kテレビの買い換え需要が伸びてきています。

でも現状では、4K・8K放送の専用チューナーを内蔵したテレビはほとんど発売されていません。その意味では、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを4K・8K放送で見たい方にとって、今はまだ4K・8Kテレビを買う時ではないかもしれません。

とはいえテレビは生活になくてはならない家電でもあります。事情があって今すぐテレビが必要な方もいらっしゃるかもしれません。だったら今は安い中古テレビで我慢して、もうしばらく4K・8Kテレビの買い時を待つ、という選択肢もあります。

ここでは4Kテレビの買い換え需要で市場に増えつつある中古テレビについて解説します。

中古テレビのメリット

2010年ごろに地上波テレビのデジタル化と省エネ家電のエコポイント制度による薄型テレビの買い替え需要が高まり、人気モデルが品薄になる一方で、下取りに出された中古テレビのマーケットも活性化しました。

当時の薄型テレビは、現在の感覚では信じられないほど高価でした。たとえば2010年発売のシャープ AQUOS LC-40AE7はサイズが40インチで、発売直後の市場価格は13万円前後。

現在の同サイズモデルと比較すると、実に倍以上の高価格です。しかし中古品なら、当時でも大手家電メーカーの37インチ液晶テレビが2~3万円台で買えたのです。

当時はエコポイントが2010年12月から減額され、2011年3月31日をもって終了という買い換え特需のラストスパートで、比較的新しい中古モデルがドッと市場に流れ込んできたのです。

現在の4K・8K買い換え需要は当時に比べると、ずっと静かで穏やかです。しかも液晶テレビはすっかり成熟商品となり、価格もじゅうぶんこなれています。国産にこだわらなければ、40インチの新品モデルを3万円台の手ごろな価格で購入することも難しくありません。

では、今あえて中古テレビを選ぶメリットはあるのでしょうか。それは現在の売れ筋価格帯のテレビは、価格競争の激化によるコストダウン優先で、品質や使い勝手よりも安さを優先させたモデルが多い、ということです。

たとえば海外メーカーの激安テレビには、リモコンのdボタンがなかったり、本体にHDMI端子がないものがあります。

大手メーカーのテレビでもパーツがモジュール化され、故障すると部品の単体交換ではなく、ユニットを丸ごと交換することになります。

このようなコストダウンは2010年の時点でもなかったわけではありません。
最近のテレビは本体の薄型化とフレームレス化がトレンドになっていて、デザインはスタイリッシュですが、そのぶんスピーカーも小さく薄くなり、エントリーモデルでは、画面下の左右両端に下向きで配置されている場合がとほとんどです。

薄型テレビに重低音や高音質を望むことはできません。画質についても、コストのかかる倍速駆動は、国産モデルでも廃止されることが多くなりました。

数年前の国産ハイクラスモデルが3万円台で手に入るとしたら、画質も音質も性能も最新の3万円台のテレビを大きくしのぐかもしれません。もちろん、安いというだけで安易に中古品に手を出すのは決しておすすめできることではありません。

中古品の状態はまさに千差万別で、個体ごとに全く異なります。本体の気づきにくいところに傷や痛みがあったり、喫煙者のテレビはタバコの臭いやヤニが内部にまで浸透していたり、B-CASカードやリモコンなどの付属品がなかったりする場合も考えられます。

B-CASカードはもともと転売禁止ですから、ない場合は再発行することができますが、スタンドのねじや部品が足りないといったトラブルもありえます。

また病院の待合室などで長年使用されたテレビは外見がきれいでも、使用時間は長くなります。

中古品は前ユーザーが何か理由があって手放したものだということを忘れてはいけません。

では新品を買うとして、少しでも安く買うにはどうすれば良いのでしょうか。次は新しいテレビの購入時期について解説いたします。

テレビは発売直後が高い

これはテレビだけに限ったことではありませんが、多くの量産工業製品の価格は発売直後が最も高く、その後は大きく下落して、それ以降は季節や転居シーズン、ボーナス時期といった要因から来る需要の変動に合わせて価格が上下しながら、徐々に下がってゆくのがふつうです。

例としてカカクコムでシャープのAQUOS 4T-C40AJ1(40インチ])の価格推移グラフを見ると、予約価格が140270円とされていますが、発売から2ヶ月後の7月末には87400円程度にまで下落しています。

その後は乱高下を繰り返しますが、発売直後の価格を上回ることはありません。

年末もテレビは高い

その年の秋冬モデルは年末商戦の主力商品なので、価格はむしろ高くなる場合が多く、安くなるのは客寄せ目的のセール品が中心です。ほしいモデルがあれば、クリスマスの前に購入するか、年明けの新春セールに期待するのが良いでしょう。

中古液晶テレビをさらに安く買う方法

昔に比べると、中古テレビの購入方法はインターネット通販やオークション、大手リサイクルショップなど多様になっています。したがって欲しい製品があれば、ネットで型番を検索して価格の安い入手ルートを探しましょう。

ただし「リサイクルショップ」といっても、良心的なショップもあれば、「ぼったくり」系のショップもあります。信頼できるのは、全国展開で修理や保証も受けられる「ハードオフ」などの大手ショップです。

価格は最安とはいえませんが、高いと思ったら、ダメ元で交渉してみるのが良いでしょう。できれば事前に相場を調べておくと、交渉に有利です。

中古だから保証は不要と割り切れる方なら、オークションで探すか、ネット通販で最安価格のショップをマークして、タイムセールなどの限定販売をねらうのもよいでしょう。

中古液晶テレビの選び方

中古の液晶テレビを選ぶ際には、まず消費電力を調べましょう。最近のテレビのバックライトは白色LEDが多く、かつての冷陰極管に比べると、長寿命で省エネになっています。

したがって消費電力が大きいモデルは、かつての冷陰極管の可能性が高く、長い目で見れば電気代はかかるし発熱量も多く、夏場に室温を上げる要因になります。最も省エネなのは有機ELモデルですが、まだ中古の流通は多くありません。

また、いくら中古は安いからといって、部屋の広さを考えずに巨大なテレビを買ってしまうのはおすすめできません。小さな部屋に大きなテレビを置くと、必然的にテレビとの距離が近づきすぎます。

テレビの光の明滅を至近距離で見ると目が疲れます。テレビは部屋に合ったサイズのものを選びましょう。

おすすめのメーカー

パナソニック

有機ELと液晶のツートップ構成でVIERA(ビエラ)シリーズの薄型テレビを展開するのが国産家電の最大手、パナソニックの特徴です。トップレンジのモデルは同社のハイファイブランド「テクニクス」の音響技術と思想を導入。

大画面の4K有機ELテレビから、小型で防水の「お風呂テレビ」まで、他の追従を許さない幅広いラインアップをそろえています。

インターネットとの連携も積極的で、レコーダーに録画した番組をスマホやタブレットでどこでも鑑賞できる機能は魅力的です。

シャープ

AQUOS(アクオス)シリーズで液晶テレビを世に広めた立て役者がシャープです。

3年前には新工場への過剰投資が裏目に出て深刻な経営危機に陥りましたが、2016年に台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に買収されると、不死鳥のごとく復活。業績もV字回復しています。

現在も液晶の王者としての貫禄を見せるシャープは、今年は世界初の8Kチューナー内蔵テレビを発表し、ラインナップも80、70、60インチの3タイプをそろえて、有機EL陣営と真っ向勝負を挑んでいます。

液晶テレビの中古のまとめ

  • 液晶テレビの中古市場は4k・8kテレビの買替え需要で比較的新しい下取り品が市場に流入しはじめています。
  • 少し古い液晶テレビは最新モデルほどコストダウンに血道を上げていないので、かつてのハイクラスモデルを選択すると、下手な新品よりも音や画質が良い場合もあります。
  • 中古の液晶テレビを購入する場合は、保証があるショップを選びましょう。