日常の風景や人物の写真と異なり、月の撮影にはちょっとした技術が必要となります。

技術といっても難しいものではなく、設定方法や撮影の時間帯などを把握すれば簡単に撮影が可能です。カメラにそこまで詳しくなくても、美しい月の写真が撮ることができます。

ここでは、月の撮影に必要な道具や設定などについて紹介します。

天体写真のデビューは月がおすすめ

天体写真と聞くと難しく感じてしまいますが、天気さえよければ月は撮影できます。ただし、スマホで月を撮っても綺麗に写らないように、何の準備もなく撮影しても上手くいきません。

また、月の形や方角、高さ、さらには季節や時間帯によっても難易度は変わります。とはいえ、必要最低限の道具と知識があれば手軽に撮影できることから、月は天体写真のデビューとして最適です。

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月の撮影に必要な3つのもの

月の撮影に必要不可欠なのが、「望遠レンズ」です。広角レンズでは小さく写ってしまうので、望遠レンズは月に限らず天体写真には必要不可欠となります。

望遠レンズの焦点距離は、35mm換算で最低でも200㎜以上、300mmあれば理想的です。200mm以下でも撮影自体は可能ですが、綺麗に写すことは困難になります。

ちなみに、カメラ自体は一眼レフにこだわる必要はなく、望遠レンズさえあれば高倍率ズームのコンデジでも撮影できます。

また、あれば便利なのが「三脚」です。比較的撮りやすい満月であれば手持ちでも可能ですが、三日月などを撮る場合は必要となってきます。

さらに、あれば重宝するのが「レリーズ」です。レリーズは遠隔でシャッターが押せる機器で、カメラに取り付ける有線のものとリモコンタイプのものがあります。

望遠での撮影は手ぶれが激しくなるので、ブレを防ぐためにもレリーズか三脚のどちらかがあれば便利です。

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月はマニュアルで撮影

月は明るいので、オートモードで撮影しても真っ白に写ってしまいます。これは夜空の暗さもカメラが考慮してしまうため、自動的に明るく撮ろうと作動してしまうためです。

そのため、月はマニュアルモードで撮影する必要があります。一眼レフ初心者だと設定が難解に感じてしまいますが、要領さえ覚えてしまえば簡単に設定できます。

カメラの主要機能一覧

満月の撮影

満月を撮る場合、ISO感度は100がおすすめです。絞りは画質の良いF値8.0に設定し、シャッタースピードは1/250秒~1/500秒ぐらいがよいでしょう。

この設定であれば、手ぶれしにくくレンズの性能を活かした撮影を行えます。

また、月単体の撮影に慣れてくれば、他の風景と一緒に撮るのがおすすめです。特に、月明かりに照らされた草原や水面などの風景を撮影するなら、最も光が明るい満月がベストタイミング。

月を画面内に入れることで画面全体が暗くなってしまうため、露出をプラス側に補正するなど調整しながら撮影しましょう。

建物や風景を入れて撮影する場合は、月と風景の明るさに差があることから、両方に露出を合わせることは現実的ではありません。

風景側に合わせると月は明るい光となり、月に合わせると建物や風景は影となります。どちらをメインに据えるかによって、写真の印象が大きく異なります。

雑誌やメディアなどでは、現実的にありえないような、ビッグサイズの月と建物がセットで写っている写真が掲載されていることがあります。このような写真は決して合成ではなく、「圧縮効果」というものを利用して撮影されたものです。

地球と月はおよそ38万キロ離れているため、こちらがどれだけ移動しようが大きさに変化はありません。一方で、地球上にある建物などの被写体はちょっとした距離感によって大きく写ったり小さく写ったりします。

これらの特性を利用することで、大きな月と風景が一緒に写った写真の撮影が可能です。遠くのものを大きく撮影できる高倍率の望遠ズームレンズを使用し、フレーム内に入れる木や建物の大きさを移動しながら微調整して撮影しましょう。

欠けた月は明るさも違う

月は欠けていくほど暗くなっていきます。そのため、満月の撮影に比べると欠けた月は設定の難易度が上がります。

半月では1/30秒~1/15秒程度、三日月などの大きく欠けた月に関しては1/15秒~1/8秒程度になることもあります。

さらに、当日の天気によっても状況が変わります。雲がかかったりすることで露出が変化することはもちろん、ちょっとした空気の澄み具合の違いや、月の高さなど、状況の違いに応じて設定を調整する必要があります。

ちなみに、欠けた月を撮影することの醍醐味の1つが「クレーター」です。

満月は光を真正面から反射するため、表面の凹凸を捉えることが困難。しかし、三日月などの欠けた月の場合は、影との境目あたりにクレーターが見えやすくなります。

狙い目としては、地球の空気の層や街の明かりの影響を受けにくい「高い位置」に月があるときです。タイミングさえ合えばデジタルカメラでもくっきりとクレーターを撮影することができます。

AEブラケティングを活用

製品にもよりますが、デジタルカメラには自動的に露出をずらして撮影する「AEブラケティング」という機能が搭載されているものもあります。

この機能では、1回シャッターボタンを押すと自動的に「補正なし」「プラス補正」「マイナス補正」の3枚を撮ることが可能です。オート露出だけではなく、マニュアル露出に関しても対応できるので、月の撮影時に活用できます。

月齢カレンダーがあると便利

満月以外にも、さまざまな月の撮影に挑戦するなら、月齢カレンダーがあれば便利です。スマホアプリなどからも月齢カレンダーは把握できるので、知っておけば撮影に最適な日を見極めることができます。

月は、太陽の位置関係によって満ち欠けするものです。

月齢と呼び名の一例としては、月齢0の状態が新月です。「月の出」は日の出頃、そして「月の入り」は日没頃ですが、太陽と同じ方向にあるためすっぽりと隠れているので、撮影には不向きです。

月齢2〜3は三日月、月齢7は右半分が見えている状態の半月、上弦の月となります。

上弦の月は「月の出」が昼頃、「月の入り」は深夜日付の変わる頃で、撮影可能な時間帯は夕方から真夜中となります。クレーターを撮るのであれば、周囲が暗くて月が高い位置にある日没から1〜2時間後を狙いましょう。

月齢12〜13が十三夜の月、そして、月齢14〜15が満月です。

満月には、他に「望月」「十五夜」「芋名月」といった呼び名が存在します。満月の「月の出」は日没頃で、「月の入り」は日の出頃。夕方から翌朝になるまで撮影できます。

満月単体ではなく、建物や木々などと一緒に撮影するなら、月が低い位置にあって空がやや明るい夕方や明け方がベターです。

月齢16は、十六夜の月、満月の一日後にあたり、少し月の出が遅くなることがためらって(いざよって)いるように見えることから、「十六夜(いざよい)」と呼ばれるようになりました。

月齢23は左半分が見えている状態の半月、下弦の月です。「月の出」が深夜日付の変わる頃で、「月の入り」が昼頃となります。

撮影可能時間帯が真夜中から朝にかけてのタイミングとなるため、撮影するには夜更かしもしくは早起きが必要となります。

月の撮影に関するおさらい

  • 月の撮影には望遠レンズが必要不可欠、さらに三脚やレリーズなどのアイテムがあれば便利
  • 満月の撮影にはISO感度100、F値8.0、シャッタースピードは1/250秒~1/500秒ぐらいがおすすめ、欠けるほどに設定は難しくなり、されに天候や空気によっても状況が変わる
  • 月の満ち欠けによって、撮影可能時間帯が変わる、月齢カレンダーがあれば役立つ