人物や花などの背景がキレイにボケた写真は魅力的です。カメラ初心者なら誰でもそんな写真を撮りたいと思うでしょう。

しかし、実際に背景をぼかした写真を撮影しようとしても、イメージしたようなボケにならないのが現実です。キレイに背景がぼかすには、それなりのノウハウが必要です。

「スマホのアプリを使えば、簡単にボケを作れる」という人もいるかもしれません。確かに今のアプリは進化していますが、これはあくまでもデジタルでの後処理で自然なボケではありません。

背景がキレイにボケて被写体が浮き上がるような写真は、スマホやコンパクトデジカメでは不可能です。その理由は、ボケができる仕組みにあります。

写真のボケは被写界深度の違いで生まれる

被写体の前後がボケるかどうかは、「被写界深度」と大きく関係しています。被写界深度とは、「被写体の前後のピントが合っているように見える範囲」のことです。

被写界深度が浅いと前後のボケが大きくなり、被写界深度が深いと前後のボケは少なくなります。つまり、ピントの合う範囲が狭ければ、ボケ感のある写真が撮影できます。

この被写界深度を左右するのが、「カメラと被写体の距離」「焦点距離」「絞り(F値)」の3つです。

カメラと被写体の距離に関してはスマホやコンパクトカメラでも可能ですが、絞りや焦点距離を変えるのはスマホやコンパクトカメラではほぼ不可能です。まさに一眼レフカメラならではの特技と言えるでしょう。

では、被写界深度の3つのポイントから、写真のぼかし方を説明します。

被写体は近くに背景は遠くにしてぼけた写真を撮る

一眼レフに限らず、カメラと被写体との距離が近い方が被写界深度は浅くなり背景はボケやすくなります。背景をぼかしたいのならズームで寄るのではなく被写体に近づいて撮影します。

さらに、被写体と背景の距離もボケ感を大きく左右します。背景が遠ければ遠いほどボケは強くなります。小物撮影などでは、ボケの具合に合わせて被写体と背景の距離を調整することも大切です。

また、室内で壁などが背景の場合は、被写体を壁から離して撮ると背景はボケるようになります。

背景を大きくぼかしたいのなら、背景を遠くにして被写体にグッと近づいて撮影しましょう。

焦点距離の長い望遠を使いぼけた写真を撮る

焦点距離とは、レンズの中心と画像センサー(撮像素子)との長さです。焦点距離はレンズによって異なります。

レンズは、大きく「広角」「標準」「望遠」の3つに分かれます。広角レンズは、焦点距離が短くより広い画角で撮影でき、標準は見た目の広さ、望遠は焦点距離が長く画角は狭くなります。

一般的に広角レンズは、35mm、28mm、20mm、標準が50mm前後、望遠が100mm、300mm、600mmなどの焦点距離になっています。

ズームレンズの場合は、18mm-55mのように最小と最大の焦点距離が表示されています。

この焦点距離が長いほど被写界深度が浅く、被写体前後のピントがボケるようになります。

カメラに標準装備しているズームレンズを利用して背景をぼかすことも可能です。この場合、ズームを望遠側にするのがポイントです。望遠側にしたままで、被写体に合わせてカメラを下げていきます。

ズームレンズに慣れているとどうしても、自分が移動するよりもズームで被写体に寄るのが習慣になっています。

自分が移動するのには違和感があるかもしれませんが、ボケ感のある写真を得るためにはカメラと被写体の距離が重要です。自分が動くことにも慣れるようにしましょう。

標準のズームレンズでも多少のボケはつくれますが、より焦点距離の長い望遠レンズの方がボケの具合は大きくなります。よりボケを強調したいのなら、望遠レンズがオススメです。

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絞り(F値)を小さくしてぼけた写真を撮る

絞り(F値)は「レンズを通す光の量」のことです。レンズにある「絞り羽根」と呼ばれる穴によって変化します。猫の目のように穴が大きくなったり小さくなったりして、レンズを通る光の量を調整します。

例えば、暗い部屋なら絞り羽根の穴を大きくすれば、レンズを通す光が増えて、明るい写真が撮影できます。

「絞りを開ける」を開けるというのは、絞り羽根を開けて穴を大きくすることを意味しているのです。絞りはF値で表されますが、開放に近い方が数値が小さく、絞るほど数値は大きくなります。

絞り(F値)が大きいと被写界深度が深くなり全体にピントの合った写真になり、絞り(F値)が小さいと被写界深度は浅くなり被写体の前後のピントがボケた写真になります。

全体をクリアに撮影したいのなら、絞り(F値)を大きく、被写体の背景をぼかしたい場合は、絞り(F値)を小さくします。

絞り(F値)を調整する場合、初心者は「絞り優先モード(AVもしくはA)」にすることをオススメします。

写真の明るさは、絞り(F値)と「シャッタースピード」で決まります。シャッタースピードは「光が通る時間」です。この2つがバランスよく調整されることで適切な明るさの写真になります。

絞り優先モードにすれば、シャッタースピードは絞りに合わせて自動的に調整されます。後は、ダイヤルを回してF値を変えるだけですから初心者でも簡単に操作できます。絞り優先モードでF値を小さくして背景をぼかしてみましょう。

また、絞り(F値)はレンズによっても違いがあります。

レンズの絞りを最大に開けた時のF値(開放絞り値)が、「F1.4」「F2.8」「F5.6」などと数値が表示されています。開放絞り値が小さいレンズほど、よりボケ感のある写真が撮影できます。

この開放絞り値が小さなレンズが「単焦点レンズ」です。

単焦点レンズでぼけた写真を撮る

単焦点レンズは、ズームのできないレンズです。

ズームができないので、撮影する時は、カメラが被写体に近づかなければなりません。少し面倒な気がしますが、単焦点レンズならではのメリットがあります。

そのひとつが、「明るいレンズ」と呼ばれるように開放絞り値が小さいことです。

カメラの絞りを小さくするのがボケ感を出すポイントですが、レンズ自体の開放値が小さければよりボケのある写真が撮影できます。

もうひとつのメリットは、ズームレンズよりも描写力が高いことです。単焦点カメラは、ひとつの焦点で最高の画質が得られるように設計されています。

その結果、ボケもふんわりとしたキレイな印象になります。アーチスティックなボケ感のある写真を撮りたいのなら、単焦点レンズはオススメです。

また、単焦点レンズでもある「マクロレンズ」もボケがキレイに再現されます。昆虫や花などの小さな世界には最適のレンズです。

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カメラでぼかし撮影する方法についてのまとめ

  • 多くの人は、プロカメラマンのように背景が美しくボケて被写体がクリアな写真を撮りたいと思うはずです。
  • スマホのアプリを使って、背景を擬似的にぼかすことはできますが、自然なボケとは雰囲気が異なります。やはり、一眼レフのようなカメラでなければ、自然で美しいぼかした写真は撮影できません。
  • 被写体の前後をぼかすには、「カメラと被写体の距離」「焦点距離」「絞り(F値)」の要素が大切です。
  • まずは、被写体にズームするのではなく、カメラが被写体に近づくことがポイントです。
  • そして、背景は遠くにある方がよりボケるようになります。
  • レンズの種類によって焦点距離が異なりますが、焦点距離が長いほどボケは大きくなります。ボケを狙うのなら、焦点距離の長い「望遠レンズ」がオススメです。
  • 絞り(F値)もボケには大切な要素です。F値が小さいほど背景のボケ感は増していきます。
  • 初心者は、絞り優先モードで撮影すると、シャッタースピードを気にせずに簡単に絞りを調整できます。また、「開放絞り値」の小さな「単焦点レンズ」を使うとふんわりとキレイにボケた写真が撮影できます。
  • 写真をより魅力的なものに仕上げるには「ボケ」は欠かせないものです。ぼかした撮影ができるように、まずは基本的な知識をマスターして下さい。