秋の味覚の代表の柿。
柿には「甘柿」と「渋柿」があるのは知っている人が多いと思いますが、品種もたくさんあり、それぞれに向き不向きの食べ方もあります。

この記事では、そんな柿について詳しく解説いたします。
柿を更に美味しく食べましょう。

柿とはそもそもなにか

まず、柿の基本情報をご紹介いたします。種類の紹介を先に知りたい方はこちらをクリックしてください。

柿の品種解説

「甘柿」と「渋柿」がある

柿には「甘柿」と「渋柿」があり、さらに甘柿は「完全甘柿と不完全甘柿」渋柿は「完全渋柿と不完全渋柿」に分類できます。

以下の説明は農林水産省のwebマガジンaffの2018年10月号からの引用です。

  • 完全甘柿
    甘柿の中で種がないらなくても渋みが抜けるものを完全甘柿といいます。甘みが強いのが特徴です。
  • 不完全甘柿
    甘柿の中で種が多く入ると渋みが抜けるものを不完全甘柿といいます。渋抜きして出荷します。
  • 完全渋柿
    渋柿の中で種が入っても渋いままのものを完全渋柿といいます。渋抜きすると程よい甘みになります。
  • 不完全渋柿
    棚が入ると種の周辺だけ渋みが抜ける渋柿を不完全渋柿と言います。渋抜きをすれば甘くなります。

出典:農林水産省 【aff】2018年10月号 特集2 柿

「甘柿」と「渋柿」の違いは、渋み成分である「タンニン」が口の中で溶ける「可溶性」であるか、溶けない「不溶性」であるかということ。

口の中でタンニンが溶ければ渋く、溶けなければ甘く感じます。

甘柿も渋柿も、幼果期には「可溶性タンニン」が含まれていますが、甘柿は成長していくと「不溶性タンニン」に変化します。

そのため、甘柿は、渋みを感じなくなるのです。

渋柿は、アルコールや炭酸ガスを使って処理すると、タンニンが可溶性から不溶性に変化するので、甘くなります。

また、柿を干して干し柿にすると、渋みは自然に抜けます。

柿の主な栄養素

  • ビタミンC
    柿に含まれるビタミンCの量は、日本人がよく食べる果物の中でもトップクラスです。
    風邪予防や美肌効果が期待できます。
  • βカロテン
    柿のオレンジ色には、抗酸化作用のあるβカロテンが含まれています。また同じカロテノイドの一種βクリプトキサンチンも多く含まれていて、発がん抑制作用があるといわれています。
  • タンニン
    渋み成分のタンニンにはアルコールを分解する作用があります。
    利尿作用のあるカリウム、酸化還元作用のあるビタミンCも含まれている柿は、その相乗効果で二日酔いに効くと言われています。
    また、タンニンは血圧の上昇を抑える効果もあります。
    しかし一方で、タンニンにより鉄分の吸収は妨げられてしまいます。
    貧血気味の人は過剰摂取を控えましょう。

柿の保存方法

柿は追熟させる必要がないので、購入したら早めに食べましょう。

常温保存すると2日程度でやわらかくなってしまいます。

柿を保存するうえで大切なことは乾燥させないことです。
ポリ袋に入れて密封し、冷蔵庫の野菜室で保存すれば1週間程度日持ちさせることができます。

柿の品種解説

ここからは柿の品種について解説いたします。ご紹介する柿は下記になります。

長文ですので、とばして選び方・食べ方を読みたい方はこちらをクリックしてください。

美味しい柿の選び方

富有(ふゆう)の特徴

「富有」は、完全甘柿の代表的な品種で日本で最も多く生産されています。

原産地は岐阜県で、明治時代中期から栽培が行われてきました。

形はふっくらとしていて丸みがあり、果皮は鮮やかなオレンジ色をしています。

果肉がやわらかく、果汁も多くて甘味が強いのが特徴です。

日持ちにも優れていて、10月下旬頃から出回ります。

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平核無(ひらたねなし)の特徴

「平核無」は「種なし柿」としてよく出回っている品種です。

原産地は新潟県ですが、山形県の庄内地方に栽培が広まっていきました。

地域によっては「庄内柿」や「おけさ柿」とも呼ぶところもあります。
四角張った扁平形をしていて、重さは約200~250g。

不完全渋柿ですが、渋抜きを行うことで甘くなり、口当たりはまろやかで果汁は豊富なのが特徴です。
10月中旬~11月頃に出回ります。

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刀根早生(とねわせ)の特徴

奈良県天理市の柿農園で「平核無」の枝変わりとして発見された不完全渋柿。

「刀根」(とね)という農園主の名前をとって1980年に品種登録されました。

見た目は平核無と同じですが、サイズはやや大きめなのが特徴です。
平核無と同じく種がなく、渋抜き後はまろやかな甘さがします。

地域によっては平核無と区別することなく、「庄内柿」や「おけさ柿」の名前でも出荷されることもあります。

他の柿に比ると出荷が早く、9月下旬頃から出回ります。

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松本早生富有(まつもとわせふゆう)の特徴

「松本早生富有」は、「富有」の枝変わりとして京都府の柿農園で発見された甘柿。

農園主である「松本」の名前をとって松本早生富有と名付けられました。

富有柿と同じく完全甘柿で、見た目や味も富有に似ていて、果皮は濃い橙色で果肉は少しやわらかく、甘味も強くて果汁も多く、ジューシーな味わいです。

富有柿とは収穫時期が異なり、富有よりの2週間程早く、10月中旬から11月上旬に収穫されます。

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甲州百目(こうしゅうひゃくめ)の特徴

釣り鐘状の形をした大玉の不完全渋柿です。

大きいものだと500g以上になるものもあります。

甲州百目は古くから各地で作られていたので、呼び方も地域によって様々です。

福島県や宮城県では「蜂屋(はちや)」と呼ばれ、主に「あんぽ柿」や「ころ柿(枯露柿)」に使用されます。

愛媛県では「富士柿」と呼ばれ、主に青果として出回っています。
関西地方では「江戸柿」や「代白柿」とも呼ばれることも。

果汁が豊富で、程良いやわらかさがあり、マイルドな甘さが特徴です。

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次郎(じろう)の特徴

「次郎」は静岡県が原産の完全甘柿。

見た目は平たい四角形で、縦に浅い溝が4本あり、濃い橙色をしています。
種はほとんど入っていません。

糖度が高く、甘味の強い柿で、カリッとした食感が特徴です。
出荷時期は10月下旬から11月頃。

また、次郎の枝変わりで収穫時期が少し早い「前川次郎」という品種もあり、こちらも甘味の強い完全甘柿です。

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市田柿(いちだがき)の特徴

長野県が原産の完全渋柿。

下伊那郡高森町(旧市田村)で栽培されていたことから、「市田柿」という名前になりました。
ふっくらとした卵形をしていて、比較的小さめの柿。

主に干し柿として利用されていて、甘味が強い品種です。

「市田柿」は商標登録されていて、長野県下伊那郡や飯田市などで生産や加工をされた市田柿の干し柿がこの名前を使用することができます。

収穫期は11月上旬から下旬頃です。

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西条柿(さいじょうかき)の特徴

「西条柿」は広島県が原産とされていて、数百年の歴史があるといわれる渋柿です。

西条柿はその見た目が独特で、丸みのある縦長の形で、4条の溝があり、果皮は薄めの橙黄色をしています。

渋抜きをした西条柿は甘味が強くて果汁も多く、やわらかいのが特徴。

ただし、軟化しやすく、日持ちはよくないので注意しましょう。

収穫時期は10月から11月頃となっています。

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西村早生(にしむらわせ)の特徴

滋賀県の柿園で偶発実生として発見された不完全甘柿。

農園主が西村氏ということから、この名前が付きました。

見た目は「富有」に似ていますが、富有に比べて甘味が控えめで果肉もかためなのが特徴です。

不完全甘柿なので、渋が抜けていないものは、渋抜きをしてから出荷されます。

果肉に黒い斑点が入ると、渋が抜けて甘くなった証拠です。

比較的大きめの柿で、9月中旬から店頭に並びます。

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愛宕(あたご)の特徴

「愛宕」は愛媛県が原産の完全渋柿。

現在は主に愛媛県や香川県など四国を中心に栽培されています。

先がとがった釣り鐘状の形で、果皮は橙黄色、サイズはやや大きめです。
収穫時期が11月下旬から12月上旬頃で、他の柿に比べて時期が遅いのが特徴です。

また、貯蔵性が良いので2月頃まで出回ります。

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太秋(たいしゅう)の特徴

「太秋」は、1995年(平成7年)に品種登録された比較的に歴史の浅い完全甘柿。

農研機構果樹研究所が「富有」と「ⅡiG-16」を交雑して選抜・育成しました。

350~400gにもなる大きな果実で、サクサクとした歯ごたえが特徴です。

果肉が緻密でやわらかく、甘味も強く果汁を多く含んでいて、食味に優れています。

また、太秋には条紋と呼ばれる黒い線が生じやすいという特徴もあります。

見た目はあまりよくありませんが、これは完熟して糖度が上がっている証拠です。
収穫時期は10月下旬から11月上旬頃。

完全甘柿で有名な富有とは、少し違った食感を楽しむことできます。

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会津身不知(あいづみしらず)の特徴

「会津身不知(あいづみしらず)」は福島県が原産の不完全渋柿。
2007年には福島県ブランド認証産品に認証されました。

この会津身不知という少し変わった名前は「枝が折れそうなほど多くの実をつける(身の程知らずな柿)」「おいしくて身の程をわきまえず食べ過ぎてしまう」といったことが由来といわれています。

「富有柿」に似て丸みのある形でやや大きく、甘くてなめらかな食感が特徴です。

種がなく食べやすいのも魅力です。

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筆柿(ふでがき)の特徴

「筆柿」は、愛知県が原産の額田郡幸田町で古くから栽培されている柿。

種がたくさん入ると甘くなる「不完全甘柿」のため、種は多めです。

種が少ないと渋みが残るので、光センサーを用いて選別され、渋のあるものは脱渋処理してから出荷されます。

筆柿は小ぶりの柿で、まるで筆先のような細長い形をしています。

甘くなった筆柿は、果肉に黒い模様が出るのが特徴で、なめらかな食感がし、程よい甘味があります。

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伊豆(いず)の特徴

1955年に現在の農研機構果樹研究所興津拠点において「富有」と「興津1号」を交雑して誕生した完全甘柿です。
静岡県で栽培されています。

伊豆柿の果実の大きさは220~250gくらい。果汁が豊富で果肉がやややわらかく、甘味があって食味良好です。

10月上旬に熟す早生種なので、早い時期から食べられるのが魅力的です。

しかし果肉の軟化が早く、あまり日持ちはしないので注意が必要です。

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四ツ溝(よつみぞ)の特徴

「四ツ溝」は、溝柿とも呼ばれていて、名前の通り表面に4本の溝が入った完全渋柿。

静岡県東部地区が原産といわれています。

果皮は橙紅色で先端がとがっていて、80~130gと小さめのサイズです。

渋抜きをした四ツ溝柿は、糖度が高く上品な味わい。程良いかたさがあって、歯ざわりも良好です。
また、果肉は緻密で種が少なく食べやすいのも魅力的です。

四ツ溝は干し柿にしても美味しく、干し柿用に脱渋していないものも販売されています。

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早秋(そうしゅう)の特徴

「伊豆」×「興津2号×興津17号」の交配により広島県で誕生し、2003年に品種登録された新しい品種の完全甘柿です。
早い時期に成熟する早生種で、9月中旬頃から収穫されます。

果肉はやわらかくて果汁も多く、甘味があります。

比較的大きめの果実で、丸みのある四角形をしているのが特徴です。

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花御所(はなごしょ)の特徴

「花御所」は鳥取県で栽培されている完全甘柿です。

江戸時代に野田五郎助という人が奈良県から持ち帰った「御所柿」の枝を接ぎ木して育てたのが起源とされています。

花御所柿は甘味が強い品種で、中には糖度が20度以上になるものもあります。

果肉がきめ細かく、果汁が多くてジューシーなのが特徴です。

収穫時期は他の柿よりも少し遅く、11月下旬から12月上旬頃に出回ります。

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美味しい柿の選び方

  • ヘタ
    ヘタがきれいで、果実に張りつき果実との間に隙間がないものが良い柿です。
    隙間があるものは、虫が入り込んでいる可能性があります。

  • 果皮がしっとりして張りがあるものが新鮮な柿です。
  • 重さ
    柿を持ったときに、しっかりと重みがあるものを選びましょう。
    軽いものは虫に食べられている可能性があります。

  • 全体的に色づいているものを選びましょう。
    色付きが不十分なものはまだ若い柿です。
    また、色味が落ちているのは新鮮なものではない可能性があります。

柿の食べ方

そのまま食べる

柿は皮を剥いてそのまま食べるのが一般的です。
しかし、皮には果実よりも栄養が多く含まれており、皮をむかずにそのまま食べることもできます。

皮は口に残りやすいので、少し抵抗がある人もいるかもしれません。

そんな人は、少し熟れた柿にすると皮も食べやすいのでおすすめです。

サラダに柿を入れる

甘味のある柿はサラダにいれるとアクセントになってとても美味しいです。

さつまいもと柿で秋の味覚たっぷりなサラダや歯ごたえを楽しめる大根とのシャキシャキサラダがおすすめ。

チーズや生ハムなど塩っけのあるものをトッピングしたものやドレッシングにヨーグルトを使ったものが柿との愛称抜群です。

柿チップする

皮は栄養豊富なので、捨てずに柿チップにすることかおすすめです。

柿チップの作り方

  • 柿の皮を剥きます。
    (なるべく硬めの皮の方が作りやすいです)
  • 天板に皮を重ならないように並べ600Wのレンジで約4分加熱、裏返して約3分加熱します。
    (少し色付くまで加熱するのがポイントです)
  • 加熱した皮をそのままレンジの中で冷まして出来上がりです。

サラダの上にトッピングすると、カリカリした食感がアクセントになり、彩りも綺麗に仕上がります。

ケーキなどのスイーツに柿を入れる

パウンドケーキやマフィンなど、ホットケーキミックスで手軽につくれるものに柿を加えると、一気に秋のツイーツに早変わり。

オーブンで焼くことにより、完熟柿だけでなく、かための柿も柔らかい食間になり、甘味も増してツイーツにぴったりです。

また、皮で作った柿チップスを添えると、見た目も食感もアクセントになります。

他にも、牛乳と柿をミキサーで混ぜて冷やすだけで簡単にプリンも作れます。

柿ジャム

ヘタと種を取り除き、果実と皮を使ってジャムを作ることができます。

作り方は、ミキサーで粉砕して柿ペーストを作り、そこに砂糖やハチミツ、レモン汁を加えて加熱するだけと、とても簡単です。

ジャムにすると保存がきくので、たくさんの柿を手に入れたときにはおすすめです。

柿のまとめ

  • 柿には「甘柿」と「渋柿」があります。更に甘柿には、受粉に関係なく渋が抜ける「完全甘柿」と受粉で種ができることにより渋が抜ける「不完全甘柿」があります。渋み成分である「タンニン」が口の中で溶けない「不溶性」であるのが甘柿、溶ける「可溶性」であるのが渋柿です。甘柿は、タンニンが口の中で溶けないので、渋みがなく甘く感じます。
  • 渋柿は、アルコールや炭酸ガスを使って処理すると、タンニンが可溶性から不溶性に変化するので、甘くなります。また、柿を干して干し柿にすると、渋みは自然に抜けます。
  • 柿に含まれているビタミンCの量は、果物の中でもトップクラスで、風邪予防や美肌効果が期待できます。柿のオレンジ色には、ある発がん抑制作用に期待できるβカロテンが豊富です。また、渋み成分のタンニンにはアルコールを分解する作用や血圧の上昇を抑える効果があると言われています。しかし一方で、タンニンにより鉄分の吸収は妨げけられてしまうので、貧血気味の人は過剰摂取を控えましょう。
  • 柿は乾燥に弱く、常温保存では2日程度でやわらかくなってしまいます。ポリ袋に入れて密封し、冷蔵庫の野菜室で保存すれば1週間程度日持ちさせることができます。柿は追熟させる必要がないので、購入後は早めに食べることがおすすめです。
  • 柿は皮を剥いてそのまま食べるのが一般的ですが、皮には果実よりも栄養が多く含まれており、気にならない人は皮をむかずにそのまま食べることがおすすめです。栄養たっぷりな皮を柿チップにして、サラダやスイーツにトッピングしてみましょう。
  • 栄養も豊富で、いろいろな料理にアレンジすることのできる柿。柿を食べて秋の味覚を楽しんでくください。