この記事では、ブランコ作業とはどんなものなのか、ブランコ作業が行われるケース、ブランコ作業の安全性や利点などについて解説いたします。

ブランコ作業は、建物など構造物において行われる作業のひとつです。

このほかには一般的に足場を設置する方法がありますが、ブランコ作業の場合、足場を設置して行う作業にはない特徴があります。

この記事を読んで、ブランコ作業について理解を深めていきましょう。

ブランコ作業とは

ブランコ作業は、ロープ高所作業とも呼ばれています。

足場を設置することなく、建物の屋上からロープを垂らし、ロープの先に取り付けられたブランコに座りながら様々な作業を行うものです。

一般的によく見られるのはビルなどの窓清掃ですが、このほかにも建物における外壁塗装や屋根塗装、補修工事、各種防水工事などの現場で用いられます。

また、ブランコ作業を行うには、ロープの他に作業者自らの操作によって上昇・下降を可能にする昇降器具と作業者の身体を保持するための身体保持器具が必要です。

ブランコ作業をおこなうケース

物理的に足場を設置できないケース

ビルなどの作業現場において、大きなスペースを必要としないブランコ作業が採用されることは少なくありません。

外壁や屋根の調査、補修、塗装に伴う高所作業では足場を設置するのが一般的ですが、様々な理由から物理的に困難な場合があります。

その一つとしてまず考えられるのが、建物密集地や狭小地で足場を設置するスペースが確保できない場合です。

また、建物が線路脇に立地している場合などもスペースが確保できず、足場を設置することができないためブランコ作業が採用されます。

このほか、1階にテナントとして店舗が入居したビルなどでは、足場によって店舗が覆い隠されてしまうと営業損失に繫がる可能性があることからブランコ作業が適しています。

騒音や防犯上の問題があるケース

ブランコ作業なら、大きな騒音が発生したり、防犯上の問題が起こることがありません。

一方、足場を設置する際には足場材を組み合わせる金属音が発生します。

この金属音は窓を閉めた室内でも80~90dbに達し、「非常にうるさい」と定義される75dbを超える騒音です。

また、足場を設置している期間は誰でも上階に行き来が可能になるため、窃盗など犯罪被害に遭う危険性も高まってしまいます。

そのため、騒音や防犯上の理由からブランコ作業が採用されることもあるでしょう。

塗装や補修箇所が広範囲でない

足場の設置に問題がない環境であっても、塗装や補修箇所が建物の限られた一部分であれば、ブランコ作業のほうが効率的で費用もかかりません。

特に外壁の一部がはがれて落下の危険があるといった緊急性の高い場合は、短期間での対応が可能なブランコ作業が適しています。

ブランコ作業の安全性

ブランコ作業は様々な安全対策のもと、作業がおこなわれています。

高所で行われることもあり、危険な作業と捉えられがちですがこれは間違いです。

ここではブランコ作業の安全性について解説いたします。

強度の高いロープを使用している

ブランコ作業の際に使用されるロープはヒマラヤ登山など過酷な環境で用いられるものと同じものを使用しています。

10人以上がぶら下がっても切れない強度を保持したものです。

命綱によって安全を確保

ブランコ作業は、2種類のロープを用いるため、万が一一方に不具合が発生したとしても、安全を確保することが可能です。

この2種類のロープには身体保持用の親綱となる「メインロープ」と、墜落阻止用の「ライフライン」と呼ばれる、いわゆる命綱があります。

足場作業よりも低い事故率

ブランコ作業では、命綱だけでなく、安全器具着用や工具落下防止措置など二重三重の安全対策を講じて作業が行われています。

また、ブランコ作業の場合、作業者は作業技術の習得と研鑽に努めているほか、安全は常に自らが確保しなくてはならない状況です。

そのため、ブランコ作業には高い集中力が求められ、常に緊張感を伴って行われることから、比較的事故率が低いのが特徴です。

一方、足場を設置した作業では、経験の浅い作業者でも容易に高所へアクセスできるほか、安全性が確保されているという錯覚を受けやすいことから気が緩みやすく、落下事故や転落事故が多い傾向にあります。

さらに、足場を設置して行う作業では足場自体が強風などで倒壊する危険性も否めません。

ブランコ作業の利点

足場を設置せずに行うことができるブランコ作業には、足場を設置した作業にはない様々な利点があります。

ここでは、その利点を具体的に解説いたします。

狭い場所でも作業可能

足場のないブランコ作業は狭い場所でも作業が可能です。

物理的に足場を設置できない場合だけでなく、足場が設置できたとしてもその場所が狭い場合には、作業効率が著しく低下します。

その点、ブランコ作業なら限られたスペースでもスムーズに作業や移動が可能です。

あらゆる建物で作業が可能

ブランコ作業は、様々な形状の建物で作業が可能です。

原則として作業の可否の判断は現地を確認しなければなりませんが、例えば、斜め勾配の屋根の建物などでも作業は不可能ではありません。

外壁工事などの場合事前に詳細な調査が可能

外壁補修などの場合、ブランコ作業なら、足場を設置することなく手軽に調査が行えるため、工事費がどれくらいかかるのかなどをはじめとした、詳細な資金計画を事前に検討することが可能です。

そのため、費用が工事前よりも大幅に予算オーバーしたり、当初の予定金額では折り合いがつかないといった契約上のトラブルも未然に防ぐことができます。

ピンポイントで修繕が可能

ブランコ作業の場合、外壁補修であれば現場調査の実施中に発見した小さな劣化はその場で即座に補修が可能です。

また、万が一工事後に不具合が発見・発生した場合でも、ブランコ作業なら迅速に追加の補修作業を行うことができます。

短時間で施工が可能

ブランコ作業では足場架設が必要ない分、工期の短縮を図ることができます。

特にタイル補修やシーリング補修、雨漏り補修、塗装の補修といった部分的な補修にはブランコ作業が最適です。

工事費用の削減が可能

ブランコ作業のであれば、足場の設置費用が不要となるため、結果として工事の品質を確保しながら工事費の節約が可能です。

これにより総工事費の削減が可能なのはもちろんのこと、削減できた費用でエントランスをリニューアルしたり、内装をリノベーションするといった、建物自体の資産価値を高めるために資金を使用できることもあります。

部分的な修繕工事では、修繕工事費自体よりも足場の設置費用のほうが高額になるというのは珍しいことではありません。

ブランコ作業についてのまとめ

  • ブランコ作業は足場を設置せず、建物の屋上からロープを垂らしてロープの先に取り付けられたブランコに座りながらさまざまな作業を行うものです。
  • ブランコ作業を行うのは物理的に足場を設置できない場合のほか、騒音や防犯上の問題から選択するケース、塗装や補修箇所が広範囲でない場合などが考えられます。
  • ブランコ作業は高所で行われることから、危険な作業と捉えられがちですが、強度の高いロープを使用しているほか、命綱を装備するなどしているため、比較的事故率が低いのが特徴です。
  • ブランコ作業の利点としては狭い場所でも作業可能なことや、どんな建物でも作業ができること、外壁工事などの場合には事前に詳細な調査ができるといった点が挙げられます。