2020年の東京オリンピックや、2018年末の4K・8K本放送開始を前にして、テレビの買い換えを検討中の方も多いと思います。テレビを選ぶ際のポイントはいくつかありますが、意外に見落とされがちなのが画面の明るさを示す「輝度」の性能です。
輝度は高ければ良いとは限りませんが、ある程度輝度の高いテレビでなければ、明るい室内で映像をはっきり視認することはできません。そこで、ここでは輝度の意味や調整法について解説します。
目次
そもそもテレビの輝度とはなにか?
「液晶」といえば、今では薄型カラーテレビの代名詞的な存在ですが、液晶そのものは発光しませんし、色もありません。液晶が持つ最大の特徴は、電気の作用で光を通したり、遮断したりする性質があることです。
液晶テレビはその性質を利用して、白色光のバックライトを液晶パネルの裏側に設置し、表側には画素ごとに赤、緑、青などのカラーフィルターをつけることで、光と色を補っています。
液晶テレビの色鮮やかな映像は、バックライトの光を受けた液晶パネルが、必要なカラーフィルターにだけ光を透過させることで生み出されています。
かつて液晶テレビと人気を分けたプラズマテレビは、1つ1つの素子が色と光を発しましたが、液晶テレビのバックライトは、プラズマテレビのように輝度を画素ごとに制御することはできません。
しかも液晶パネルは画素の数だけ穴がある板のようなものですから、4Kや8Kといった高画素になればなるほど光の透過率が落ち、高い輝度を得るのが難しくなります。
逆に言えば、液晶テレビは構造的に輝度をアップすることが難しいからこそ、輝度の高さと制御が液晶テレビの性能を測る目安にもなる、ということになります。
バックライトコントロールとは 設定方法やおすすめのテレビを解説
ハイビジョン(HD)放送とは何か フルハイビジョンと4Kの違い
4Kテレビってなに?4Kテレビとはなにかとメーカー別のおすすめ品
おすすめのテレビの種類 液晶テレビと有機ELテレビの違いや特徴
輝度の単位は「cd/m2」
少し難しい話になりますが、輝度は平面的な発光体の単位面積当たりの明るさのことです。
その度合いはcd/m2(カンデラ毎平方メートル m2はmの2乗)という単位記号で表されます。
具体的には、平面的な光源が放つ光の量が、その平面と垂直な方向で1カンデラであれば、輝度は1cd/m2になります。輝度を示す単位記号にはもうひとつ「nit(ニト)」があります。
定義はcd/m2と同じで、1nit=1cd/m2となります。ちなみに「カンデラ」は「キャンドル(ロウソク)」のことで、その名の通り、ロウソク1本分の明るさを意味します。
輝度は調整できる
液晶テレビは輝度が低いと昔からいわれますが、最近の液晶テレビは性能が良く、明るい部屋でも輝度に不満を感じることはまずありません。
しかも部屋の明るさや照明の色に合わせて、自動的に輝度や色味を調整する機能も、多くのテレビが備えています。
購入時のテレビの画質設定は、消費者の目を引くために輝度や色調を最大限に強めているため、むしろ輝度が高すぎると感じてしまう人もいるほどです。そのような場合には手動で輝度を調整することも可能です。
画質設定で調整
テレビのリモコンのメニューボタンで「画質設定」あるいは「映像調整」を選ぶと、シャープのテレビでは「明るさ」、他メーカーでは「バックライト」という項目で、好みの輝度に調整することができます。
ちなみに有機ELテレビの場合は、画素を構成する素子自体が発光するため、バックライトはありません。そこで有機ELテレビの輝度調整項目はどのメーカーも「明るさ」になっています。
輝度を調整する際は、まず部屋の明るさを決めて、テレビの映像がまぶしく感じないレベルまで輝度を下げるようにしましょう。
バックライトが明るすぎると、映像の陰影や黒い色が液晶の光漏れでぼんやりと浮いて見えるようになります。日中はカーテンやブラインドで部屋をある程度暗くして、テレビの輝度を下げるようにすると、画質もよくなりますし、節電にもなります。
輝度の調整比較
有機ELテレビは素子自体が発光するので、バックライトはありません。一方、液晶テレビのバックライトは構造の違いによって、直下型とエッジ型に分けることができます。
直下型は、液晶パネルの背面全体に光源のLEDライトを等間隔に配置しているタイプをいいます。エッジ型は、LEDライトをテレビ画面の上下または左右の側面(エッジ)に配置し、その光を導光板というパネルで裏面全体に拡散させるタイプをいいます。
エッジ型は、光源のLEDライトが少ないために製造コストが低く、消費電力も抑制できるメリットがあります。
一方で、光を導光板で拡散させるために、色ムラが発生しやすく、明るさにも限度があること、直下型に比べバックライトの局所的な制御(エリア制御)が難しい、などのデメリットもあります。
いずれにせよ光源をバックライトに頼る液晶テレビにとって、輝度を細かく制御するのは簡単ではありません。液晶は光を透過したり遮断したりすることができますが、完全に透明になったり、完全に光を遮断して真っ黒にできるわけではありません。
映画の夜のシーンなどで黒がグレーっぽく見えるとしたら、液晶の光漏れに原因があります。
また、同一の画面で極端に明るい部分と暗い部分が共存するシーンでは、光漏れと輝度不足の相乗効果で、画面全体のコントラストが下がってしまうことがあります。
そんなときには、映像の局所的な明暗に合わせて、バックライトの明るさを部分的に調整すれば、液晶の欠点を補って、暗い部分や黒い色はより黒く、明るい部分はより鮮やかに明るく映し出すことができます。
こうしたバックライトの部分的な輝度調整機能を「エリア駆動」といいます。エリア駆動では、別々に輝度調整できるエリア数が多ければ多いほど効率的に制御できますが、エッジライト型では構造上、画面を格子状に区切るようなエリアの設定はできませんので、その分効果も少なくなります。
おすすめの輝度の調整がしやすいテレビ
薄型テレビのトップレンジではシャープ以外の家電各社が有機ELテレビをそろえています。ここではバックライト方式の輝度制御に着目して、オーソドックスな液晶テレビ2機種をご紹介します。
東芝直下型LEDテレビ レグザ49C310X
2017年発売の東芝レグザ49C310Xは、IPS液晶を採用した49インチの4Kテレビです。バックライトには直下型LEDを採用しています。
エリア駆動機能はありませんが、バックライトの輝度に合わせて映像出力のガンマ値などをダイナミックに制御する「ダイナミックグローバルディミング」により、バックライトの輝度レンジと色彩表現の範囲を拡大しています。
LG直下型LED+エリア制御テレビ 65SK8500PJA
LGエレクトロニクスの65SK8500PJAは、8500Pシリーズの最上級モデルで、直下型のLEDバックライトと、IPS液晶パネルを採用した65インチの4Kテレビです。
直下型バックライトにはLG独自のエリア駆動技術「Full Array Dimming」を搭載。映像に合わせてバックライトの明るさをエリアごとに調整し、黒色の深みや暗部の階調を高めています。
テレビの輝度まとめ
- 液晶テレビは液晶パネルの背面にバックライトを搭載しています。
- 液晶テレビのバックライトには、直下型とエッジ型の2種類があります。
- 液晶テレビの高級機はバックライトにエリア制御機能を搭載し、高輝度と高コントラストをハイレベルで両立しています。