こちらの記事は2021年12月16日に加筆修正いたしました。

腕時計には実に様々なパーツがあります。

多数のパーツがそろい、それぞれが機能を果たすことで、時計の複雑な機構は成り立っているのです。
腕時計にとっての心臓部でもある「ムーブメント」や、そのムーブメントを収納してある「ケース」、文字盤上の目盛や数字を現す「インデックス」など、それぞれに名前が付けられ大事な役割を果たしています。

そんなパーツの中の1つとして存在するのが、「リューズ」と呼ばれるパーツです。

リューズは「竜頭」や「りゅーず」と表記されることもあり、腕時計にとってとても大事なパーツですが、その名称は意外と知られていないことが多いかと思います。

そんなリューズの、知られざる実態を解明しながら、重要な役割と取り扱い方法について、これから詳しく解説いたします(2020/10/6更新)

リューズ(竜頭)とはそもそもなにか

リューズとは、腕時計のケース横に取り付けられた突起した部品です。
文字盤でいうと3時の横に位置しています。

「引き出し式」と「ねじ込み式」があり、リューズを引っ張ったり押し込んだり、またはねじ込んだりすることで作動させる部品です。

多くの時計が引き出し式を採用していますが、ダイバーズウォッチや一部のブランドにおいては、「ねじ込み式」が採用されています。

「腕時計のリューズ」と部品名を言われてもピンとこない人でも、詳しい説明をすれば、ほとんどの人がその存在を認識している、腕時計の中でも重要な部品の1つです。

腕時計にあるボタンやリューズは、腕時計が持つ様々な機能を引き出すために、なくてはならない貴重な部品であり、人と腕時計をつなぐというとても大切な役割も果たしています。

リューズの役割

リューズの仕組み

リューズには大きく分けると3つの役割があります。

1つの部品で3つの仕事をこなすことができるのは、リューズの位置によって、中の構造で関連する歯車の動きに変化があるからです。

リューズの位置を3段階に調整することで、その腕時計が持つ目的の機能を引き出します。

腕時計のタイプやモデルによっては、3段階式ではなく2段階式のものもあるため、リューズを指で段階的に引き出しながら、時刻合わせや日付合わせの機能の判別をします。

次の項目からは、リューズの位置によって変わる機能を、リューズの位置を確認しながら説明いたします。

リューズの機能 ゼンマイの巻き上げ

・リューズが1番押し込まれた位置

この位置にリューズがある時に巻き上げると、ゼンマイを巻くことができます。

リューズが通常収まっている位置でもあり、機械式時計ならではの機能です。

ゼンマイを手動で巻き上げるタイプと自動で巻き上げるタイプがありますが、どちらも共通してリューズがついています。
手巻き式のリューズなら、手動でリューズを巻き上げることで腕時計が動き、自動式リューズなら手から伝わる振動によってゼンマイが巻き上げられる仕組みです。

ですが自動式リューズでも、手巻き式のように手動でゼンマイを巻き上げることも可能となっています。

リューズの機能 時刻合わせ

・リューズが1番引き出された位置

リューズを最大限に引き出した位置で回転させると、針を動かして時刻合わせをすることができます。
多くの時計が右回し方式を採用し、時刻を進める時には右に回して調整します。
機械式時計だけでなく、クォーツ式腕時計でも同じ機能です。

リューズの機能 カレンダー調整

・リューズが元の位置より少し引き出された位置

ゼンマイの巻き上げの位置と、時刻合わせの位置のちょうど中間の位置にリューズがある状態です。

カレンダーの調整ができる機能ですが、この機能がついていないモデルであれば、リューズがこの位置で止まることはありません。

回転させる方向により、日付や曜日合わせの表示が切り替わります。

機械式時計の時間合わせとカレンダー合わせをする方法を解説

リューズの取り扱い注意点

そもそも時計という機械自体が、とても精巧で複雑な構造をした精密機器であるため、取り扱いには充分気を付ける必要があります。

だからこそ、部品の1部でもあるリューズを直接触って操作する際には、さらに細心の注意を払わなくてはいけません。
ここからは、そんなリューズを操作する際の注意点を、いくつか説明いたします。

カレンダー調整の時間の注意

・調整してはいけない時間帯

日付が変わる午前0時の前後4時間は、リューズを操作してカレンダー調整をしてはいけません。
なぜならば、前後4時間にあたる午後8時~午前4時という時間帯は、時計内部で「日送り車」と呼ばれる、日付を変更するための歯車が作動しているからです。

そんな時間帯にリューズを操作すると、歯車の噛み合わせに二重の大きな負担がかかってしまい、故障の原因となってしまいます。

ですが、この時間帯はあくまでも時計上での時間帯です。

あらかじめ時計の時刻を調整し、この時間帯を避けた状態にすれば、実際この時間帯でもカレンダー調整をすることが可能となります。

その際、カレンダー調整後に時刻を元に戻すことが必要です。

・いつでも調整可能なブランド

また近年においては、いつでも自分の好きな時間帯にカレンダー調整ができるモデルも誕生しています。
ロレックスやブライトリングなどが、その代表的なブランドです。

日々進化し続けるムーブメントは、生まれ変わるたびにいつも新しい能力を私たちに見せてくれます。

いつでもカレンダー調整ができるという、ロレックスやブライトリングの驚くべきムーブメントに、多くの人が驚かされ魅了されているのです。

回転方向の注意点

時刻合わせをする際、リューズは右回しで回転させます。

右回しをすると時刻が進み、反対の左回しをすると時刻が戻る仕組みです。

特にアンティークものの時計や古い時計の場合、反対の左回しは構造的に負担が大きく、故障の原因となってしまいます。

アンティークものの時計でなくとも、左回しは時計にとって負担が大きいため、できるだけ避けた方が無難です。

また、ブランドやメーカーによっては回転方向に違いがあるため、事前に確認してから回転させるようにしましょう。

巻き止まりの注意点

ゼンマイを巻き上げる際には、リューズを操作して巻き上げることになりますが、巻き止まりがきているのに、それを越えて巻き続けるとゼンマイが切れてしまい、故障の原因となります。

まずは自分が所持している時計のリューズの巻き止まり感覚を覚えることが大事です。

また高い頻度でいつもいっぱいまでゼンマイを巻き上げると、それだけリューズやムーブメントにかかる負担も大きくなり、構造の歯車が摩耗してしまい、時計の寿命を縮めることにもなります。

ゼンマイの巻き上げは、適度な回数を守って行うことが、時計を長持ちさせるためのコツです。

リューズの不具合発生時の対処法

不具合の前にリューズの構造解説

リューズは、オーバーホールなどの際に腕時計から取り外さないと、その全貌を確認する機会がなかなかありませんが、先が細くなったねじのような形をしています。

リューズの下にある細い棒状のものを巻き芯といい、リューズはこの巻き芯と一体化することで役割を果たすことができるのです。

操作する際は慎重に操作する必要がありますが、慎重に操作していても、その形状から不具合が発生してしまうことも多々あります。

ここからは、リューズに発生しうる不具合の種類とともに、その対処法を詳しく解説いたします。

リューズの不具合 主な原因

・リューズがうっかり取れる

リューズと巻き芯は、ネジの関係のようになっています。

そのため、巻き上げる度に強い力がかかり、ネジの溝が経過年数によって摩耗していき、緩めば外れてしまうことも不思議ではありません。

また特に大きな力を加えていなくとも、リューズが巻き芯ごとうっかり取れてしまうこともあります。

いずれにしてもリューズが取れたまま放置してしまうと、取れたリューズを紛失してしまったり、露わになったネジの溝がダメージを受けたりと、マイナス効果しかありません。

リューズがうっかり取れてしまったら、すぐに修理専門店などに持ち込んで修理を依頼しましょう。

 

 

・リューズが戻せない

リューズを引き出して操作した後に、元の位置に戻せなくなることもあります。

ゴミが入り込み、ネジの溝が摩耗していることが原因です。

引き出したリューズをそのままにしてしまうと、せっかくの防水機能が働かなくなってしまい、水や異物の浸入を許すことになります。

特にダイバーズウォッチなどに搭載されている高い防水性は、リューズのしっかりとしたねじ込みとロックがあって成り立つものです。

放置すると二次被害を招く心配もあるため、リューズを元の位置に戻せなくなった時は、急ぎ修理専門店での修理が必要です。

 

・リューズが重い

リューズを巻き上げる際、異常に重く感じたり、うまく回らなかったりした時はリューズや内部の構造に、錆が発生している可能性があります。

力任せにして無理に回転させると、内部でリューズが折れてしまったり、全く動かなくなってしまったりと、さらなる緊急事態を招くことにもなりかねません。

リューズが重く、うまく回転しない時には、構造内部の油が切れている可能性もあるため、オーバーホールしてすぐに確認することが必要です。

 

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リューズ まとめ

意外と名前を知られていないリューズですが、その役割は想像以上に大きく、私たちと腕時計をつなぐ、とても重要な仕事をしている部品です。
小さくとも大きな仕事を果たしているリューズは、操作する際、慎重に取り扱わなくてはいけません。
ですが、その姿形が語るようにとても繊細で、破損や不具合を生じる可能性が高い部品でもあります。

持っている機能性から、消耗品と捉えても不自然ではなく、だからこそ細やかなメンテナンスが要される部品でもあるのです。

リューズの調子を確認するためにも、日ごろからオーバーホールなどによるメンテナンスを怠らないことが何よりも大事です。

このような細やかな部品への配慮を心がけることこそ、大事な腕時計をいつまでも愛用するための、ポイントとなってきます。