現代人にとってスマートフォンは生活に必須のアイテムですが、使用頻度が高い人ほど不満を感じるのがバッテリーの持ちの悪さと、充電にかかる時間です。

そこで最近のスマホは、バッテリーの持続時間と、急速充電機能をアピールするものが増えています。一方で、急速充電はバッテリーにダメージを与える、との指摘もあります。

本当のところはどうなのでしょうか。この記事では、最近のスマホに採用されている急速充電システムについて解説します。

急速充電とはなにか?

そもそも「急速充電」とふつうの充電とでは、何がどうちがうのでしょうか。

ひとことでいえば急速充電は、バッテリーに供給する電力をふつうよりも多くすることで、充電時間を短縮する技術です。

スマホの充電速度は機種によってちがいますが、一般的に急速充電した場合の充電時間は、通常モードの1/2から1/4と言われています。しかも急速充電は最初の1時間で8割前後まで一気に充電できるため、急ぐときには重宝します。

では、なぜ急速充電をスマホの標準仕様にしないのでしょうか。それはバッテリーに用いられるリチウムイオン電池が化学変化を起こしやすく、充電中は電力量を正確にコントロールしないと、発熱や発火などの事故をまねく可能性があるからです。

そこで充電器が急速充電に対応できない場合や、ケーブルの品質が悪く電力の供給が安定しない場合には、スマホ側のパワーマネージメント機能が働いて、充電速度を抑える仕組みになっています。

電圧や電流が一般の製品よりも高く充電が早い

スマホの急速充電は、通常の充電モードよりも高い電力を供給することで、充電時間を短縮する技術です。

では、どうすれば高い電力を供給できるのでしょうか。バッテリーに送る電力の量は、電圧の高さと電流の多さで決まります。したがって充電する電力を増やすには、電流か電圧、またはその両方を増やすという3通りの方法があります。

従来のUSBの給電規格では、電圧は5Vと決められているため、電力を増やすには電流を増やすしかありませんでした。

そこで新たな給電規格として「USB Power Delivery (USB PD)」が策定され、最大100Wの電力が供給できるようになりました。

そして電圧も5Vのほかに12Vと20Vの供給を可能にしました。このUSB PDの登場によって、あらたな急速充電規格が続々と生まれ、最新のスマホに搭載される動きが広がっています。

本体の性能によって充電スピードは大きく変わる

スマホの急速充電は、スマホ本体と充電器、および充電ケーブルの3点が同じ急速充電規格に対応していなければなりません。

充電器やUSBケーブルが急速充電に必要な性能や規格を満たしていなければ、スマホ側で急速充電はできないと判断して、通常の速度で充電します。

一方、充電器やケーブルが最新の急速充電規格を満たしていても、スマホ本体の性能が追いついていなければ、やはり急速充電はできません。急速充電を安全確実に実行するには、スマホと充電器の双方が同じ規格を満たしている必要があります。

一方で、急速充電の仕組みや規格はメーカーによってまちまちで、統一された基準はありません。たとえばQualcomm社が開発したQuick Chargeは、XperiaなどAndoroidスマホの多くが採用している最新の急速充電規格ですが、同じAndoroid系でも、HUAWEI社はSuper Chargeという独自規格を採用しています。

一方、iPhoneの急速充電規格には名称がなく、充電器の電流供給能力が高ければ、それに合わせて充電量を増やす仕組みです。

そのためiPhoneの付属充電器よりも給電量が高いiPad用の充電器を使うほうが充電時間が短縮できることが、裏技として知られています。

急速充電のデメリット

急速充電は、通常の充電よりも短時間で充電できますが、そのぶん電池にダメージを与える可能性を危惧する声も広がっています。実際のところはどうなのでしょうか。ここでは急速充電のデメリットについて解説してゆきます。

満タンの充電は「熱」となり、バッテリーにダメージを与える

スマホの充電量が満タンになったあとも充電しつづけていると、発熱してバッテリーにダメージを与えるといわれています。

でも、最近のスマホは充電量が満タンになると自動的に給電を停止する仕組みになっているので、過充電でバッテリーが劣化することはまずありません。

またスマホを充電しながら使用するとバッテリーに負荷がかかって熱くなり、やはりバッテリーの劣化につながる、ともいわれますが、そのような使い方はスマホメーカーにとって想定の範囲内ですので、じゅうぶんな対策が講じられています。

ただし社外品の充電器や、質の悪い充電ケーブルで充電した場合や、スマホを落としたり曲げたりしてバッテリーを物理的に傷つけてしまったような場合には、スマホが異常に熱くなることもあります。

リチウムイオン電池にとって熱は劣化の要因になるばかりでなく、発火や爆発につながる危険があります。スマホがやけに熱いと感じたら、すぐ使用を中止しましょう。

デメリットへの対処方法

急速充電には、これといったデメリットはありません。ただし充電中にスマホ本体や充電機器が熱くなる場合は、なんらかの異常があると考えて、使用を中止した方がよいでしょう。

普通の充電と寝る前の充電を使い分ける

急速充電でスマホがほんのり温かくなる程度なら問題はありません。

でも、気になる場合は、急ぐとき以外は急速充電を使わず、寝る前に通常モードで一晩かけて満タンに充電するというように使い分けるのがよいでしょう。

スマホ側にも対策は施されているので気にしすぎなくてよい

最新のスマホと純正の充電機器であれば、安全機能やパワーマネジメント機構などの発熱発火対策が施されていますので、安心して急速充電を利用することができます。

バッテリーの劣化も急速充電のほうが早いわけではありませんので、気にしすぎる必要はありません。

急速充電機器を買う際の注意点

急速充電用の充電器を新たに購入する際は、ケーブルも急速充電対応の信頼できる製品を選ぶようにしましょう。

急速充電器とケーブルはアンペア数にこだわる

スマホの急速充電システムはメーカーや機種によってさまざまです。充電器や充電ケーブルを購入するときは、メーカー純正品を選ぶのが無難です。

量販店などで社外品を選ぶときには、対応電流を示すアンペア数と、電圧を示すボルト数に注意してください。スマホ各社が採用している急速充電システムの仕様は公表されていませんが、充電器とケーブルが2.4A(アンペア)までの出力に対応していれば、ほとんどの機種で急速充電が可能になります。

ただしQuick Charge対応のスマホには、「Quick Charge対応」と明記されたものを選んでください。

急速充電器もケーブルの出力に対応できるものを用意する

急速充電は供給電力のアンペア数が高いので、充電ケーブルもそれに対応していなければなりません。

安価なケーブルは電気抵抗が大きく、電流や電圧が安定しないため、充電時間が長引いたり、故障の原因になる可能性もあります。

急速充電のデメリット対策まとめ

  • スマホの急速充電は、通常の充電モードより供給電力を増やすことで、充電時間を短縮している。
  • リチウムイオン電池は化学変化を起こしやすく、充電中は電力量を正確にコントロールする必要がある。
  • 急速充電でバッテリーが劣化することはない。
  • 急速充電はスマホ本体と充電器だけでなくケーブルも高性能でなければ実現できない。